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2021年06月30日

東京都の処分事例にみる5つの教訓(No.34)

新コンプライアンスシリーズ
わたしたちの法令順守宣言!

流通ジャーナリスト:大栗 準(おおぐり じゅん)

 東京都は2020年3月25日付で、投資学習用USBメモリーをネットワークビジネス(NB)で販売していた3事業者に対して、特定商取引法に基づく行政処分をおこないました。

 そのうちの1社である、I社に対しては、6カ月間の業務の一部停止を命じました。

認定された違反行為は、
[1]勧誘目的等不明示、
[2]不実告知(商品の性能)、
[3]迷惑勧誘、
[4]適合性原則違反、
[5]支払い能力虚偽申告教唆
―の5点です。

違反のオンパレード!

 まるで違反のオンパレードを繰り広げたかのようなこの会社は、為替相場に投資するバイナリーオプション取引の学習用プログラミングツールを内蔵したUSBなどをNBで販売していました。

「AIが入ったUSBだから勝てる」などと言っていたのに、システムに人工知能が搭載されていなかった点などが不実告知と認定されました。

 健全なNBを展開するにあたって、この処分にはいくつか教訓とすべき点がありますので、順を追ってみていきましょう。

[1]「適合性原則違反」について
 「消費者の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘」をおこなうのが、適合性原則違反です。

今回は投資経験も収入・財産もない学生に投資関連商品を販売したことがこの違反に問われました。

認知症の高齢者や、知識・経験の乏しい若年者を勧誘することも、この違反に問われます。注意しましょう。

[2]「支払い能力虚偽申告教唆」について
 今回の処分では、消費者が購入資金を貸金業者から借り入れるにあたって、借入理由を「自動車購入」にすることや、年収を「百何十万」にすることを指示し、虚偽の申告をさせていたことが違反に問われました。
借り入れの書類に虚偽の申告をさせるのは立派な違反行為です。

[3]「迷惑勧誘」について
「複数日にわたり3時間以上の勧誘を行う」ことが、迷惑勧誘に問われました。

「長時間」「深夜・早朝」「執拗」といった勧誘は違反に問われやすいので注意しましょう。

[4]都道府県による処分について
 最近の傾向として、消費者庁などの国家機関だけでなく、都道府県による処分も増えています。

東京都が2019年度に出した、特商法に基づく業務停止命令の件数は、前年度比5件増の12件となっています。

[5]投資型ビジネスがNB組織に拡散する危険について
 今回違反が指摘されたような、投資型のビジネスは、健全なNBの組織内でも広がりやすいといわれています。

上位の会員が勧誘を始めてしまい、傘下の会員がまるごと騙されてしまうケースも少なからずあるようです。

そうした兆候を感じたら、会社に相談するなど、適切に対処しましょう。

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