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2021年11月02日

ご注意! 「免疫」は最も危険なワード(No.38)

新コンプライアンスシリーズ
わたしたちの法令順守宣言!

流通ジャーナリスト:大栗 準(おおぐり じゅん)

 消費者庁は2020年8月7日、「健康な人の免疫機能の維持に役立つ」などと機能性を表示する機能性表示食品5品の届け出を受理しました。

具体的には、キリングループが届け出ていた飲料3品とサプリメント2品がそれで、免疫機能では初めて消費者庁が受理したケースとなりました。

 これは、極めて画期的なことです。
ご存知のように、機能性表示食品制度は、国の定めるルールに基づき、事業者が、食品の安全性・機能性に関する科学的根拠(エビデンス)などを、消費者庁に事前に届け出れば、「○○に良い」「○○に役立つ」などと、一定の機能性を表示することができる制度です。

機能性表示食品の功罪

 似た制度に「特定保健用食品(トクホ)」がありますが、これは国が審査をおこなうもので、機能性表示食品は事業者自らの責任でエビデンスを提示する必要があります。

 そのため十分なエビデンスさえあれば、「記憶力の維持に役立つ」「目のピント調節を助ける」「骨の健康維持に役立つ」といった、これまでにない踏み込んだ表現が可能なのです。

 2015年4月の機能性表示食品制度の発足以来、たくさんの機能性表示が可能になってきました。

 そんな中、消費者庁がこの5年間、どうしても首を縦に振らなかったのが「免疫」という言葉を含む機能性表示の届け出でした。

 その「免疫」という言葉を含んだ機能性表示食品の届け出を、消費者庁が今回、初めて受理したのです。

 ここで読者の皆さんにお伝えしたいことは、「『免疫』という言葉が食品においても表示できるようになって良かった!」ということではありません。

 むしろ、「消費者庁は、届け出の受理を5年も渋るほど、『免疫』という言葉を軽々しく使うことを強く問題視している」ということをお伝えしたいのです。

 「免疫」という言葉は、非常に訴求力の高い言葉です。
「これを飲んだら免疫力が高まるよ」などというと、「欲しい!」と思う人もいるでしょう。

 新型コロナウイルスの感染拡大が問題になっている昨今においてはなおさらです。

何にしろいまや日常的に「高齢者は免疫力が低いから危険だ。何とか高めるように努力しよう!」というような言い方がされているのですから。

「免疫表示」で逮捕者も!

 行政は特に、訴求力の高い言葉を問題視します。

「『免疫力が高まる』といっているだけで、病気が治るっていっているわけじゃないんだからいいじゃん!」という理屈は通用しません。

 「〇〇を飲むと免疫力が高まる」といった時点で、薬機法、特定商取引法、景品表示法のトリプル法規に違反することになります。

最悪の場合、逮捕されます。
実際に「免疫」関連の効果をうたい、逮捕されたり、行政処分を受けたりした事例が複数あります。

 冒頭に示した「健康な人の免疫機能の維持に役立つ」という表現も、十分なエビデンスを持たずにいえば、逮捕や行政処分の対象になります。

 「がんが治る」という表現がだめなのと同じくらい、「免疫力が高まる」も絶対NGです。

間違っても使わないよう、くれぐれも注意してください。

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