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2025年10月31日

新コンプライアンスシリーズ(Vol.02)

新コンプライアンスシリーズ
危ないよ!それ知らないと

流通ジャーナリスト:大栗 準(おおぐり じゅん)
※2024年6月号に掲載された記事です。

連鎖販売取引の相談件数、激減!
良い傾向だが油断は禁物!

 今回は冒頭、喜ばしい数字をご紹介しましょう。
国民生活センター(以下国セン)のPIO-NET(パイオネット=全国消費生活情報ネットワークシステム)の集計によると、2023年度(23年4月~24年3月)の、連鎖販売取引を含む「マルチ取引」の消費者相談の件数は5,138件でした。

 ピーク時の07年度が2万4,000件超だったことを考えると、これは驚異的に少ない数字です。
業界の健全化が進んでいる様子が見て取れます。

 ちなみに23年度の「マルチ取引」の相談件数は6,844件、その前の22年度は8,837件でしたから、年々相談件数は減少しています。

 しかも、国センにおける「マルチ取引」の定義は、「商品・サービスを契約して、次は自分が買い手を探し、買い手が増えるごとにマージンが入る取引形態」となっています。

 つまり、「マルチ取引」の相談の中には、特定商取引法上の「連鎖販売取引」だけでなく、ねずみ講まがいの悪質なマネーゲームのビジネスも含まれているのです。

 実際に、「マルチ取引」の相談件数のうち一定の割合を、投資や仮想通貨などを連鎖的に勧める、いわゆる「ものなしマルチ」が占めるとみられます。
つまり、健全なネットワークビジネスの相談件数は、5,138件という数字よりはるかに少ないでしょう。

 業界にコンプライアンス意識が浸透し、不当な勧誘行為を行う人が減ってきたのだと思います。
業界の社会的認知の拡大にもつながる、非常に良い傾向といえるでしょう。

件数減は悪目立ちに通じる

 ただ、喜んでばかりはいられません。
全体の相談件数が減っているからといって、行政が「もう連鎖販売の行政処分はしないでおこう」と考えてくれるほど甘くはありません。

実際、連鎖販売業種の事業者への行政処分は引き続き行われています。
22年には誰もが知る大手外資系NB会社が業務停止命令を受けました。

 ここまで「マルチ取引」の相談件数が減ってくると、以前よりもずっと少ない相談件数でも、「悪目立ち」し、処分に至りかねません。
販売店(会員)一人ひとりに、クレーム・相談を1件も発生させないような、ていねいな対応が求められています。

 ちなみに、前出の大手外資系NB企業の処分では、「氏名等の明示義務違反」「勧誘目的を告げずに誘引した者に対する、公衆の出入りしない場所における勧誘」「迷惑勧誘」「概要書面の交付義務違反」が指摘されました。

 こうした違反に当たる勧誘行為をしていないか、もう一度しっかり、自身のビジネスの進め方を見直す必要があるでしょう。

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