2019年12月18日
行政処分だけではない! 次々に起こる逮捕事例(No.16)
新コンプライアンスシリーズ
わたしたちの法令順守宣言!
流通ジャーナリスト:大栗 準(おおぐり じゅん)
この連載では、行政処分の事例を取り上げる機会が多くありました。
今回は趣向を変えて、警察による〝逮捕〟に焦点を当ててみます。
健康関連商材を扱う企業・個人の逮捕は、実はけっこう頻繁に起こっているからです。
2018年7月には、健康食品メーカーA社の社長ら二人が薬機法(医薬品医療機器等法/旧薬事法)違反で警視庁に逮捕されました。
実はこの逮捕には前段がありました。
2017年の暮れに、A社の代理店B社の社長が、やはり薬事法違反で逮捕されていたのです。
ただ、この逮捕劇は、少しお粗末でした。
事実でも「治る」は厳禁!
B社の社長の逮捕のさいには、警察からのリークがあったのか、逮捕直前に、テレビ局がカメラマンを連れて、この店社長を直撃しました。
そして、「この健康食品でガンが治るとか言っているらしいじゃないですか」
などとマイクを突き付けられたその代理店B社の社長は、なんとあろうことか、
「だって、ガンが治るんですよ。小さくなっちゃうんですから」
といったことをカメラの前で口走ってしまったのです。
その姿は、全国にニュースとして放映されることになりました。
その後、その商品のメーカーA社にも捜索が入り、警察は4点の動かぬ証拠を発見、代理店B社の社長の逮捕につながったといいます。
この事例から教訓として学ぶべきは、
[1]仮に事実でも「病気が治る」といった表現は絶対に厳禁。
[2]体験談集などを含め、薬機法違反を疑われるような資料は、持っていることすらNG――ということでしょう。
薬機法違反に、個人・法人は関係ありません。
メーカーであろうと代理店であろうと、そして一販売店であろうと、逮捕されるときは、逮捕されます。
十分に注意してください。
書面不交付だけで逮捕も
同じく2018年7月には、特定商取引法(特商法)違反による逮捕事件も起こっています。
山形県警が、健康食品訪販会社の社長ら3人を逮捕しました。
罪に問われたのは「不備書面の交付」でした。
特商法では、訪販の勧誘をおこなうときに、契約書面を交付しなければならない旨を定めています。
契約書面は売買契約の内容を明らかにするもので、クーリング・オフの方法なども記載されています。
3人は書面を渡していたのですが、適正な内容ではなかったということで逮捕に至りました。
連鎖販売取引(エナジックビジネス!)においては、契約書面を交付しないといけないのはもちろん、勧誘に先立って商品・企業・取引などの概要を記した概要書面を交付することが求められています。
書面を渡さなかっただけでも、逮捕されることさえもあるということを、一人ひとりがしっかりと肝に銘じていただきたいと思います。
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