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新コンプライアンスシリーズ(Vol.03)

新コンプライアンスシリーズ
危ないよ!それ知らないと

流通ジャーナリスト:大栗 準(おおぐり じゅん)
※2024年7月号に掲載された記事です。

断定的判断の提供、適合性原則違反など分かりにくい違反行為を解説する

 最近は、特定商取引法に基づく、連鎖販売事業者に対する処分が減少傾向にあります。
業界の健全化の進展も背景にあるのではないかと思われます。

 ただ、行政処分や警察の検挙などは、突然やってきます。
消費者庁も警察も、事前予告などしてくれません。いつ何が起こるか分かりません。

日頃から、「李下に冠を正さず(不正を疑われるような行いはしない)」という気持ちで、コンプライアンスに取り組んでおく必要があります。

 そうした観点から今回は、FX売買ソフトの連鎖販売取引を行っていた、複数の個人事業主に対して23年7月に行われた業務停止命令(15カ月)の処分内容を確認しておくことにしましょう。

 この事例は「違反のオンパレード」です。
[1]氏名等の明示義務違反(統括者の氏名、勧誘目的及び役務の種類の不明示)、
[2]断定的判断の提供、
[3]適合性原則違反、
[4]支払能力虚偽申告教唆、
[5]概要書面不交付、
[6]契約書面不交付――
の六つの違反が指摘されました。
もはや、法律を守ろうという意識が皆無だったのではないかという気すらします。

 もちろん、この連載を読んでおられる賢明な皆さんが、ここまでの違反を犯すことはまずないでしょう。

ただ、聞いただけでは意味が分かりにくいと思われる違反事項も指摘されていますので、そこを解説しておきたいと思います。

 [1]~[6]の違反の中で、分かりにくい違反事項というとまずは、[2]の「断定的判断の提供」でしょうか。
「断定的判断の提供」というのは、「確実でないものが確実であると誤解させること」を指します。

今回の事例では「一緒にやろうよ、損はしないから」「すぐに元が取れるから、借金しても何の問題もないよ」と言ってビジネスに勧誘したことが違反に問われました。
ビジネスは、儲かるかどうかを事前に確定的に言うことはできません。注意しましょう。

 [3]の「適合性原則違反」も一見するだけでは何のことやら分からないでしょう。
「適合性原則」というのは簡単に言うと「相手方の知識、経験、財産の状況に照らして不適当な勧誘をしてはならない」ということです。

例えば、若年者や認知症高齢者に契約を勧誘すると、この違反に問われます。
今回の事例では、学生に対して約53万円という高額な契約の勧誘を行ったことが違反に問われました。

  [4]の「支払能力虚偽申告教唆」も分かりにくいですね。
これは、貸金業者で借入をさせたり、ローンを組ませたりするに当たって、事実と異なる申告をするよう示唆する行為を指します。

今回の事例では「学生だと収入が低いから社員だと言って」「月収24万円だとすると年収288万円だから、切りよく年収300万円にしよう」などと虚偽申告をそそのかしていました。

 軽い気持ちで行っても違反は違反。
間違っても違反が指摘されないよう健全にビジネスを進めていきましょう。


新コンプライアンスシリーズ(Vol.02)

新コンプライアンスシリーズ
危ないよ!それ知らないと

流通ジャーナリスト:大栗 準(おおぐり じゅん)
※2024年6月号に掲載された記事です。

連鎖販売取引の相談件数、激減!
良い傾向だが油断は禁物!

 今回は冒頭、喜ばしい数字をご紹介しましょう。
国民生活センター(以下国セン)のPIO-NET(パイオネット=全国消費生活情報ネットワークシステム)の集計によると、2023年度(23年4月~24年3月)の、連鎖販売取引を含む「マルチ取引」の消費者相談の件数は5,138件でした。

 ピーク時の07年度が2万4,000件超だったことを考えると、これは驚異的に少ない数字です。
業界の健全化が進んでいる様子が見て取れます。

 ちなみに23年度の「マルチ取引」の相談件数は6,844件、その前の22年度は8,837件でしたから、年々相談件数は減少しています。

 しかも、国センにおける「マルチ取引」の定義は、「商品・サービスを契約して、次は自分が買い手を探し、買い手が増えるごとにマージンが入る取引形態」となっています。

 つまり、「マルチ取引」の相談の中には、特定商取引法上の「連鎖販売取引」だけでなく、ねずみ講まがいの悪質なマネーゲームのビジネスも含まれているのです。

 実際に、「マルチ取引」の相談件数のうち一定の割合を、投資や仮想通貨などを連鎖的に勧める、いわゆる「ものなしマルチ」が占めるとみられます。
つまり、健全なネットワークビジネスの相談件数は、5,138件という数字よりはるかに少ないでしょう。

 業界にコンプライアンス意識が浸透し、不当な勧誘行為を行う人が減ってきたのだと思います。
業界の社会的認知の拡大にもつながる、非常に良い傾向といえるでしょう。

件数減は悪目立ちに通じる

 ただ、喜んでばかりはいられません。
全体の相談件数が減っているからといって、行政が「もう連鎖販売の行政処分はしないでおこう」と考えてくれるほど甘くはありません。

実際、連鎖販売業種の事業者への行政処分は引き続き行われています。
22年には誰もが知る大手外資系NB会社が業務停止命令を受けました。

 ここまで「マルチ取引」の相談件数が減ってくると、以前よりもずっと少ない相談件数でも、「悪目立ち」し、処分に至りかねません。
販売店(会員)一人ひとりに、クレーム・相談を1件も発生させないような、ていねいな対応が求められています。

 ちなみに、前出の大手外資系NB企業の処分では、「氏名等の明示義務違反」「勧誘目的を告げずに誘引した者に対する、公衆の出入りしない場所における勧誘」「迷惑勧誘」「概要書面の交付義務違反」が指摘されました。

 こうした違反に当たる勧誘行為をしていないか、もう一度しっかり、自身のビジネスの進め方を見直す必要があるでしょう。


新コンプライアンスシリーズ(Vol.01)

新コンプライアンスシリーズ
危ないよ!それ知らないと

流通ジャーナリスト:大栗 準(おおぐり じゅん)
※2024年5月号に掲載された記事です。

あなたのための法令順守を楽しく学ぼう

 わたしは訪販や通販などの流通業界を専門とする流通ジャーナリストで、すでに20年ほどのキャリアがあります。
この間、流通業界を巡るコンプライアンス(法令順守)の状況は劇的に変化しました。
ひと言で言って「厳しく」なったのです。

 言うまでもなく、ネットワークビジネスを展開している皆さんにとって、これは重大なことです。
そこで改めて、コンプライアンスについて連載を開始するよう仰せつかりました。
皆さんと一緒に、楽しく学んでいけたらと思っています。

 連載の目的は、ただ一つ。
皆さんの日頃のビジネス活動が、万が一にも法令を犯すといったことがないようにすることです。
皆さんが、安心して、気持ちよく、精いっぱいビジネスを拡大させていける環境を整える一助になればと思っています。

 「法律違反なんてするわけがない」――そんな風に思っておられる方も多いかもしれません。
確かに私たちは、生きてきた中で、刑法などの条文を一つも勉強した記憶がありませんが、警察に捕まったりしたことはないと思います。
「普通に正しいことをやっていれば、法律なんて犯すはずがない」と思っておられるかもしれません。

 ただ、ビジネスの世界はちょっと特殊です。
特定商取引法(特商法)や薬機法、景品表示法(景表法)といった法律で、さまざまなルールが設けられています。
「普通」に考えて正しいのではないかと思うことが、実は法律違反になったりすることもあるのです。

こんなことまで"違法"に!?

 法律を知らないが故に、罰金を取られたり逮捕されたりするのは、わりに合わないと思いませんか。
そういったことがないよう、学んでいきましょう。
 「普通」に考えて間違ったことをしていないように思えるのに、法令違反に問われるのは、たとえば次のようなケースです。

 [1]「すごい人がいるからとにかく来て」と誘って、ビジネスセミナーに来てもらった。

 これは、特商法の、「勧誘目的の不告知」という違反になります。
連鎖販売取引に誘う場合は、氏名・名称や商品の種類、勧誘の目的であることを事前に告知しなければなりません。

 [2]「私の友だちが重い病気で困っていたんだけど、還元水を飲んだら治っちゃったの!」と実体験を語った。

 これは薬機法違反です。
医療機器である還元水生成器で可能な訴求は「胃腸諸症状の改善」まで。
それを超えて効く・治るをうたった時点で薬機法違反と判断されます。
事実だからといって許されるものではありません。

 [3]「世界ナンバーワンの素晴らしい還元水を一緒に飲み、組織を広げてみませんか」というチラシを作って近所に配った。

 これは二つの意味で法令違反の恐れがあります。
まず、「世界ナンバーワン」をうたうならば、確固とした「合理的な根拠」が必要です。
「合理的な根拠」がないのに「ナンバーワン」をうたうと、景表法違反や特商法違反に問われることになります。
口頭で言う場合も同じです。

 もう一つとして、特商法の広告規制に違反している可能性があります。
 連鎖販売取引に勧誘する広告をする場合は、法律に決められたさまざまな事項(たとえば報酬プランの計算方法など)をその広告内に書かなければ違反になってしまいます。

 これからも、こうした実際のビジネスの現場で生きる法令知識を順次ご紹介していきます。


コンプライアンス「Q&A」(第36回)

エナジック販売店の皆さん 必見!
"真の健康"を実現するためのコンプライアンス
「Q&A」

※2024年4月号に掲載された記事です。

「適格消費者団体」とは何か?
不特定かつ多数の消費者の利益の擁護を目的に、差止請求権の行使に必要な適格性を有する消費者団体として内閣総理大臣の認定を受けた法人を指し、全国に26団体あります。

 この適格消費者団体は、会社や販売店が行っている、あるいは行おうとしている特定行為の停止・予防、その他の適切な処置を取ることを請求できます。

 具体的には、これらの団体は、会社や販売店が下記の行為を不特定かつ多数の者に行おうとした場合、その行為者に(勧誘者の行為については統括者に対しても)、行為の停止もしくは予防、その他の必要な措置をとることを請求できます。

1.契約の締結について勧誘を行う際、又は契約の解除を妨げるために、事実と違うことを告げる行為又は故意に事実を告げない行為。
2.契約を締結させ、又は契約の解除を妨げるため、威迫して困惑させる行為。
3.誇大広告等をする行為。
4.連鎖販売取引につき、利益が生ずることが確実であると誤解させる断定的判断の提供により契約締結を勧誘する行為。
5.消費者に不利な特約、契約解除に伴う損害賠償額の制限に反する特約を含む契約の締結行為。

 これらは、この連載で何度も説明してきた禁止行為等に該当します。
実行すれば、行政から処分を受ける可能性だけではなく、適格消費者団体からも個別で行為の差止等の適切な措置を取るよう請求が来る可能性があります。
契約の申込み又はその承諾の意思表示は取り消せるのか?
特定商取引に関する法律(特商法)の第34条「禁止行為」の部分にも関連しますが、不実告知や重要事項の不告知による誤認で契約の意思表示を行った場合には、その意思表示を取り消すことができます。

 連鎖販売業を行う者(販売店)が、契約の締結について勧誘をする際、以下の行為をしたことにより、消費者がそれぞれ以下の誤認をし、それによって契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときには、その意思表示を取り消すことができるとされています。

1.事実と違うことを告げられた場合であって、その告げられた内容が事実であると誤認した場合。
2.故意に事実を告げられなかった場合であって、その事実が存在しないと誤認した場合。

 同じく第34条「禁止行為」で定められているように、契約の締結について勧誘を行う際に、商品の品質・性能、特定利益(マージンやコミッション)、特定負担、契約解除の条件、そのほかの重要事項等について事実を告げなかったり、事実と違うことを告げることは禁止されています。

 間違った情報を信じたことが契約の意思表示をするきっかけになったにもかかわらず、実際にはそのような事実がなかった場合、契約の意思表示の取り消し、すなわち解約を受け付けざるを得ない状況になってしまいます。

 正しい情報を余す所なくお伝えし、きちんと納得していただいたうえで契約に至るように、日頃から意識してビジネスを進めていきましょう。

コンプライアンス「Q&A」(第35回)

エナジック販売店の皆さん 必見!
"真の健康"を実現するためのコンプライアンス
「Q&A」

※2024年3月号に掲載された記事です。

中途解約・返品ルールについて詳しく教えてください。
連鎖販売契約を結んで組織に入会した消費者(無店舗個人)は、クーリング・オフ期間の経過後も連鎖販売契約を解除できます。

 特定商取引に関する法律(特商法)は、消費者が不利益を被ることなく、公正な取引が行われることを目的としており、特に中途解約や返品に関しては明確なルールが設けられています。

 特商法第40条の2第1項では連鎖販売契約の中途解約について規定されており、連鎖販売契約の基本部分及び特定負担としての商品販売部分の解除に関して、将来に向かってそれができる旨の記載があります。

 販売店契約を解除することにより、今後、特定負担として商品を買い続ける必要はなくなります。

 第3項では中途解約に伴う損害賠償の制限が規定されており、契約の締結及び履行のために通常要する費用や、既に受領した特定利益(マージンやコミッション等)を超えて損害賠償を請求されることは無いと記載されています。

 第2項では商品販売契約の解除について規定されており、連鎖販売契約における特定負担としての商品販売契約の部分が解除できる旨が記載されています。

 第4項では商品販売契約の解除に伴う損害賠償の制限について規定されており、販売した製品が返還された場合や引き渡し前である場合には、商品販売価格の十分の一に相当する額以上の損害賠償や違約金を請求されることは無い旨が記載されています。

 商品が返還されない場合においては、契約の解除自体は可能であるものの、商品購入代金相当額が損害賠償額に当たるため、返金を受けることはできません。

 上記項目を踏まえ、以下の条件を全て満たせば、商品販売契約を解除することができます。

1.)入会後1年を経過していないこと。
2.)引渡しを受けてから90日を経過していない商品であること。
3.)商品を再販売していないこと。
4.)商品を使用又は消費していないこと(商品の販売を行なった者がその商品を使用又は消費させた場合を除く)。
5.)自らの責任で商品を滅失又はき損していないこと。

 なお、中途解約と一言で纏めて説明されていますが、大枠として「連鎖販売契約の中途解約」に関する部分と「商品販売契約の解除」に関する部分に分けて考えることが必要です。

 また、割賦販売契約(還元クレジットやEペイメントによる分割払い契約にて商品を購入したケース)の場合、連鎖販売法に関わる部分ではありませんがそれらも分けて考える必要があります。

 エナジックも上記特商法によって定められた内容に従って、中途解約及び返品のルールを定めています。

詳しくは「エナジック入会のご案内 概要書面」の8ページ「■中途解約・返品ルールについて」をご確認ください。

コンプライアンス「Q&A」(第34回)

エナジック販売店の皆さん 必見!
"真の健康"を実現するためのコンプライアンス
「Q&A」

※2024年2月号に掲載された記事です。

契約の解除(クーリング・オフ制度)について、詳しく教えてください。
「契約内容を明らかにする書面」を受け取った日から20日を経過するまでは、書面または電磁的記録により無条件で契約の解除を行うことができる制度です。

 連鎖販売取引のさい、消費者が契約を締結した場合でも、法律で決められた書面を受け取った日から数えて20日以内であれば、消費者は連鎖販売業を行う者に対して、書面または電磁的記録により契約の解除(クーリング・オフ)をすることができます。

 ちなみに電磁的記録とはデータを意味する法律用語の一つで電子メールや、フロッピーディスク、CD-ROM、USBメモリ、HDDなどのコンピュータ用メディアや、キャッシュカードの磁気部分などに記録されたものが該当します。

それはまた、書面のように「目で見える物」とは異なる「不可視の無形物」と言えるでしょう。

 クーリング・オフの効果は書面を発信したときから発生します。
ただしその商品の最初の引渡しを受けた日が、書面を受領した日の後であるときは、その引き渡しを受けた日が起算日となります。

 なお、連鎖販売業を行う事業者(エナジックと販売店も該当)が、事実と違うことを言ったり威迫したりすることにより、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフしなかった場合には、事業者から「クーリング・オフ妨害を解消するための書面」が交付され、その内容についての説明を受けた日から20日を経過するまでは書面又は電磁的記録によりクーリング・オフすることができます。

 クーリング・オフを行うさいには、後々のトラブルを避けるためにも、書面の場合には特定記録郵便、書留、内容証明郵便などで行うことが薦められます。

 また、電磁的記録の場合には、たとえば、電子メールであれば送信したメールを保存しておくこと、ウェブサイトのクーリング・オフ専用フォーム等であれば画面のスクリーンショットを残しておくことなど、証拠を保存しておくことが望ましいと考えられます。

 契約の解除が行われた場合、商品の返品に要する費用は会社の負担となりますので、エナジックの場合は下記宛てに着払いで商品を返送してください。

〒576-0017 大阪府交野市星田北1-40-1
株式会社エナジック UM係
電話番号:072-893-2290


 お客様は、損害賠償、違約金の支払いを請求されることは一切ありません。

 また、商品が会社に到着して確認後、速やかに支払済みの商品代金を返還します。

 なお、「エナジック入会のご案内」の最終ページに「クーリング・オフの書面の書き方」の書式見本が掲載されていますので、そちらもぜひ参照してください。

コンプライアンス「Q&A」(第33回)

エナジック販売店の皆さん 必見!
"真の健康"を実現するためのコンプライアンス
「Q&A」

※2024年1月号に掲載された記事です。

特定商取引法での「行政処分や罰則」にはどのようなものがありますか?
違反に対する処分には、取引停止命令や業務禁止命令などがあります。

 連鎖販売取引における行政処分と罰則に関する定めは、特定商取引法違反を中心に多岐にわたります。

主な違反内容としては、勧誘目的の不明示、契約書面の記載不備、不実告知、迷惑勧誘、適合性原則違反(十分な判断能力のない人の勧誘)、支払能力の虚偽申告教唆などが挙げられます。

これらの違反行為に対する行政処分には、取引等の停止命令や業務禁止命令が含まれ、その期間は数ヶ月から1年以上に及ぶことがあります。

 たとえば、外国為替証拠金取引(FX)の自動売買ツールを提供する某業者は、特定商取引法違反で15ヶ月間の取引停止命令を受けただけでなく、再発防止策の制定やコンプライアンス体制の構築が命じられました。

 そのほか、情報商材入りタブレットの売買契約およびビジネススクールの役務提供契約に関連して、勧誘目的の不明示や契約書面の記載不備などの理由で9ヶ月の取引停止命令を受けた企業もあります。

また、移動電気通信サービスに関連する業者も、同じ違反行為で9ヶ月の取引停止命令を受けています。

 さらに、勧誘者が「何もしなくても月収500万円くらいになる」という虚偽の内容で多数の会員を勧誘したことが不実告知に当たるとして、9カ月間の一部業務停止命令をだしたケースもあります。

この場合、ほとんどの会員は高価な健康食品や浄水器などを買わせられたあげく、実際には利益を得られていませんでした。

 これらの事例から、連鎖販売取引における行政処分は主に特定商取引法に基づいて実施され、違反行為の種類や重大性に応じて処分の内容と期間が決定されていることが分かります。

こうした処分は、消費者保護の観点から重要な意味を持ち、業者に対しては法令遵守の重要性を強調しています。

 また、連鎖販売取引における以下のような違反行為に対しては、6ヶ月以下の懲役又は100万円以下の罰金、またはこれらの併科(懲役と罰金の両方)が科せられることが定められています。

 その違反行為とは、勧誘のさいや契約締結後に、商品の品質・性能、特定利益・特定負担・契約解除の条件などの重要事項について、そもそも告げないこと、及び事実と異なることを告げることが含まれます。

 連鎖販売取引は、消費者を保護し、市場を健全に保つために厳格に規制されています。
したがって、事業者はこれらの規制を必ず遵守する必要があります。

また、消費者も連鎖販売取引に関わるさいには十分な注意が必要であり、不審な勧誘や取引には警戒して参加しないことが求められます。

コンプライアンス「Q&A」(第32回)

エナジック販売店の皆さん 必見!
"真の健康"を実現するためのコンプライアンス
「Q&A」

※2023年12月号に掲載された記事です。

特定商取引法での「書面の交付」にはどのような内容が記載されていますか?
特定商取引法は、連鎖販売業を行う者が連鎖販売取引について契約する場合、以下の書面を消費者に渡さなければならないと定めています。

 【契約の締結前】
 当該連鎖販売業の概要を記載した書面(概要書面)を交付しなくてはなりません。

書面を交付する義務が生じるのは、直接の紹介者である販売店になります。
概要書面には以下の事項を記載することが定められています。

1)統括者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
2)連鎖販売業を行う者が統括者でない場合には、当該連鎖販売業を行う者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
3)商品の種類、性能、品質に関する重要な事項(権利、役務の種類及びこれらの内容に関する重要な事項)
4)商品名
5)商品の販売価格、引渡時期及び方法その他の販売条件に関する重要な事項(権利の販売条件、役務の提供条件に関する重要な事項)
6)特定利益に関する事項
7)特定負担の内容
8)契約の解除の条件、その他の契約に関する重要な事項
9)割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項(クレジットカードからの支払請求の拒否)
10)法第34条に規定する禁止行為に関する事項

 【契約の締結後】
 遅滞なく、契約内容について明らかにした書面(契約書面)を渡さなくてはなりません。

書面を交付する義務が生じるのは主催会社である株式会社エナジックとなります。
契約書面には以下の事項を記載することが定められています。

1)商品の種類、性能、品質に関する事項(権利、役務の種類及びこれらの内容に関する事項)
2)商品の再販売、受託販売、販売のあっせん(同種役務の提供、役務の提供のあっせん)についての条件に関する事項
3)特定負担に関する事項
4)連鎖販売契約の解除に関する事項
5)統括者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
6)連鎖販売業を行う者が統括者でない場合には、当該連鎖販売業を行う者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
7)契約年月日
8)商標、商号その他特定の表示に関する事項
9)特定利益に関する事項
10)特定負担以外の義務についての定めがあるときには、その内容
11)割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項(クレジットカードからの支払請求の拒否)
12)法第34条に規定する禁止行為に関する事項 そのほか消費者への注意事項として、書面をよく読むよう赤枠の中に赤字で記載する必要があり、契約書面におけるクーリング・オフの事項についても赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。

コンプライアンス「Q&A」(第31回)

エナジック販売店の皆さん 必見!
"真の健康"を実現するためのコンプライアンス
「Q&A」

※2023年11月号に掲載された記事です。

特定商取引法の「未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止」とはどのような内容ですか?
消費者の利益を守り、不必要な情報の拡散を防ぐための措置が定められています。

 連鎖販売取引において、事業者間のコミュニケーションや顧客獲得の手段として電子メールを用いることが増えてきました。

確かに便利な方法なのですが、しかし、電子メールを用いた宣伝活動には法的な制約が存在します。

 特定商取引法第36条の3には、「未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止」という項目が明記されており、その内容と意義を正確に理解することは、事業の適法運営にとって不可欠です。

以下、詳しく説明をしてみます。

(1)未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止の主旨
 特定商取引法第36条の3では、受取人の同意を得ることなく電子メールを用いて広告を送信することを禁止しています。

これは、消費者の利益を守るためであり、それだけでなく、同時に不必要な情報の拡散を防ぐための措置として定められています。

具体的には、以下のような行為が禁止されています。

●受取人の事前の承諾なく、電子メールによる広告を送信すること。
●送信元の情報を偽装することや、受取人が広告の受信を拒否する手段を提供しないこと。

(2)違反の実例
●その1:Aさんは、エナジックビジネスを宣伝するために、元々の知り合いだけでなく、第三者から入手した大量のメールアドレスリストにも広告メールを一斉送信しました。

 このリストにアドレスを掲載された多くの人びとはAさんから送られるメールの受信に同意していません。
この行為は特定商取引法第36条の3に違反しています。

●その2:Bさんは、広告メールの送信元を偽装し、広告の内容も不明瞭なものにして送信しました。

受取人がこのメールの受信を拒否する方法も提供されていません。
このような行為も違法となります。

(3)販売店の対応
 未承諾の広告メールの送信は、消費者からの信頼喪失はもちろんのこと、法的な制裁を受けるリスクがあります。

 そこで、一般連鎖販売事業者(販売店)として、以下の点を守ることが求められます。

●広告メールの送信対象者は、その受取を明確に同意した者に限定する。
●送信元の情報を正確に表示し、広告メールの受信を停止する手段を受取人に提供する。
●第三者からメールアドレスリストを購入して利用する場合は、そのリストの成り立ちやアドレスの収集方法を十分に確認し、法的な問題がないことを確認する。

 以上の内容を理解し、連鎖販売取引の適法な運営を心掛けることが求められます。
不明点や疑問点が生じた場合は、速やかに専門家の意見を求めるよう努めましょう。

コンプライアンス「Q&A」(第30回)

エナジック販売店の皆さん 必見!
"真の健康"を実現するためのコンプライアンス
「Q&A」

※2023年10月号に掲載された記事です。

特定商取引法に規定されている「誇大広告等の禁止」とはどのような内容ですか?
消費者を欺いたり誤解させたりしないよう、広告に関する厳格な基準を設けています。

 特定商取引に関する法律第36条では、誇大広告や虚偽の広告、または消費者に対して誤解を招く広告を禁止しています。

この規定は、消費者保護と公平な商取引の確保を目的としており、広告主が適切な情報を提供し、消費者が正確な判断を下すことができるようにするための法的措置として重要です。

以下に、この法律に基づく「誇大広告等の禁止」についての概要と、実例を示します。

【健康効果の誇大広告】
 「ガンを完全に治す! 還元水で奇跡の回復!」
というような広告は、還元水を飲むことでガンが完治すると誇大に宣伝しています。

ガン治療については医療専門家の指導が必要であり、還元水だけでガンが治るという主張は科学的に証拠がないため、消費者を誤解させるものといえます。

 「還元水で老化を逆転!10歳若返りの秘密!」。
この広告は、還元水を摂取することで老化を逆転させ、若返ることができるかのように主張しています。

しかし、還元水は健康に良いとされることもありますが、老化の逆転や年齢の若返りを約束する根拠はなく、誇大広告とみなされます。

 これらの実例は、電解水生成器に関する誇大広告の一部です。
特に健康に関連した主張や病気治療に関する主張が医学的な根拠を欠いている場合、誇大広告とみなされ、消費者を欺く可能性が高いのです。

【報酬プランに関しての誇大広告】
 「この報酬プランなら誰も紹介しなくても必ず儲かります!!」。
こんな広告は、連鎖販売取引の性質を無視し、すべての参加者が利益を得ることを保証しているかのように受け取れます。

しかし、連鎖販売は参加者が新たなメンバーを勧誘し、その勧誘による収益を得る仕組みであり、必ずしも利益が保証されるわけではありません。

【製品の性能や機能の虚偽の表現】
 製品を広告するさい、その性能や機能に関して虚偽の情報を提供することは誇大広告の一例とみなされます。

たとえば、電解水生成器で生成される強酸性電解水の残留塩素濃度を実際よりも高く宣伝することでその性能が過大に評価される場合、誇大広告とされてしまいます。

【顧客の声を捏造した宣伝】
 商材に関するレビューや評判を装った偽りの広告を出すことも、誇大広告に該当します。
実際の顧客の声ではなく、架空の顧客の声や評価を活用することは、消費者を誤解させるために禁止されています。

 以上に示した事例は、特定商取引に関する法律第36条が規制対象とする広告の一部です。
商品やサービスに関する広告を出すさいに、誇大広告や虚偽の情報を活用しないように十分注意を払わなければならず、この法律に違反すると罰則を科せられることになっています。

 消費者に正確な情報が提供され、安心して商品やサービスを選択できるようにするため、法律はさまざまな規定を設けているのです。